寝室のエアコンを頭の上に配置しようとしているすべての人に伝えたい—
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頭の上のエアコン配置は、
デメリットしかありません!
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私はリフォーム設計を本業としている一級建築士です。
設計をしていて意外と配置に困るのが、この寝室のエアコン位置。
寝室内に外部に面した場所、かつ、エアコンを配置するのにじゅうぶんなスペースがある場所は意外と少なく、選択の余地がありません。
さらに、寝室の部屋形状によっては、ベッドの配置にも選択肢がないことも。
深く考えずにエアコンを配置すると、ベッドの枕元、頭の上にエアコンが配置されてしまう確率がものすごく高いのです。
しかも、打ち合わせで頭の上のエアコンを避けるよう提案をしても、施主からはこう言われがち。

風向を変えるから、気にしないよ
でもですね、このエアコン×頭の上問題は、そんなに簡単に解決する問題ではありません。
この記事では、寝室のエアコンを頭の上に配置してはいけない理由と、その解決策についてお話します。



さっそく、寝室のエアコンを頭の上に配置すると起こることをお話しますが、その前に家づくりで後悔したくない人に必ず読んでおいてほしい記事が2つあるよ!
- 見落とすと即後悔につながる図面のチェックポイント
家づくりで後悔しないためには、施主も図面をしっかり確認することが絶対に必要。
設計者に任せきりにした結果、「こんなふうにできあがるなんて思わなかった」と後悔する施主がたくさんいます。


- 築古の家を700軒以上見て、リフォームしてきた一級建築士が教える「新築後のエグい後悔」。
家づくりの後悔には「取り返しのつかないレベル」のものがいくつかあります。
なかには、1千万円超えの負担を強いられる後悔も。
そんな震えるほどの後悔をしてしまわないために、この記事がめちゃくちゃ役立ちます。


寝室のエアコンを頭の上に配置すると、ほこりとカビを吸い込む
寝室のエアコンを頭の上に配置してはいけない最大の理由が、ほこりとカビを吸い込んでしまうこと。
エアコンには、ほこりとカビがたまりがちです。


そのほこりやカビが一番落ちてきやすい場所=エアコンの真下。


風向を下向きではなく上向きにしてもエアコンの真下にほこりやカビが落ちることは変わらないし、暖房時も冷房時も同じです。
寝室のエアコンをベッドの頭の上に配置した人が、



のどが痛い
と悩むのはエアコンあるあるの事例なので、私が設計をするときには全力で回避するようにしています。



回避する方法については、後ほど「解決策」のところで説明するね
寝室のエアコンを頭の上に設置すると、暖房時の温風が直撃
寝室のエアコンを頭の上に配置してはいけない理由、2つ目は暖房時の温風が頭に直撃すること。


暖房時は、エアコンの風向を下にするのが効果的です。
そのため、頭の上にエアコンを設置すると、寝ている人の顔面に温風が直撃することになります。
頭に温風が直撃すると起こる問題は、以下2つ。
- 不快
- 乾燥
温風が直撃すると不快
頭に温風が直撃すると起こる問題、1つ目は不快感。
エアコンの風が身体にあたり続けると、ものすごく不快ですね。
ましてや、顔面に直撃するのは、拷問に近いレベルです。
そして、温風でも寒さを感じます。
人は身体に風があたると、それが温風であっても寒く感じるのです。
温風が直撃すると乾燥する
エアコンから出る空気は、通常の空気に比べて乾燥しています。
その乾燥した空気が直撃することによって、身体の水分が奪われるのです。
さらに、吸い込むことによって喉が乾燥するというデメリットも。





頭の上にエアコンがあったって、風向を上向きや横向きにすれば直撃しないで済むよね?
次は、このように思う人に向けて、説明しますね。
寝室のエアコンを頭の上に設置すると、全然暖かくならない
寝室のエアコンを頭の上に配置してはいけない理由、3つ目は暖房時の頭に直撃を避けて風向を上向きや横向きにすると、全然暖かさを感じられないこと。



なにを言っているの?と思う人もいると思うので、わかりやすく説明するね
まず、エアコンの風向は、以下のように設定するのが基本です。
- 冷房時→上向きか水平
- 暖房時→下向き
なぜかというと、冷たい空気は重く、温かい空気は軽いから。
わかりやすく図にすると、こんな感じです。








このように、暖房時の頭直撃を避けようとして風向を上向きや水平にしてしまうと、部屋の上部ばかりが温まり、エアコンをつけているのに全然暖かくない!ということになるのです。


寝ている人の高さにある空気が、まったく温まらないという残念な結果になります。
寝室のエアコンを頭の上に設置すると、冷房時に枕元下がほこり溜まりになる
寝室のエアコンを頭の上に配置してはいけない理由、4つ目は冷房時に枕元下にほこりがたまること。
先にお話ししたように、冷房時はエアコンの風向を上向き、または水平に設定するのが基本です。



上向きや水平なら、頭の上にエアコンがあっても、風が直撃しないから問題ないのでは?
そう思いますよね。
でも、寝室のエアコンを頭の上に配置することには、冷房時にもやっぱり問題があります。
それが、このほこり溜まり問題。
部屋のなかにあるほこりは、エアコンの風の流れと一緒に部屋の中を舞い、移動します。
ほこりは空気より重いので床に溜まっていきますが、その溜まる場所がエアコンの真下になるのです。
わかりにくいので図にしますね。


寝室のエアコンが頭の上にある=ほこり溜まりが頭の下にあるということになり、これまたほこりを吸い込みやすい環境に。
寝室のエアコンを頭の上に設置すると、二重にも三重にも、ほこりを吸い込みやすいという残念な結果を引き起こします。
寝室のエアコンを頭の上に設置するその他のデメリット
寝室のエアコンを頭の上に配置してはいけない理由は、ほかにもあります。
- 地震時の落下
- 水漏れ時の被害
地震時の落下
寝室のエアコンを頭の上に配置してはいけない理由、5つ目は地震時に落下するとキケンなこと。
エアコンの室内機は10~20kg程度の重さがあるため、頭に落ちてきたらかなりのダメージがあります。



エアコンは壁にガッチリ固定してあるんでしょ?そうそう落ちないと思うけど
ふつうはそう思いますよね。
でも。
私がリフォームの現場で見るエアコンは、けっこういいかげんに取り付けられていますよ。
エアコンの取り付けは、まず壁に「据付板」という金属の板をビス固定し、その据付板にエアコンを引っかけて固定します。


この据付板は壁に5本以上のビスで固定するのが基本ですが、壁に下地を入れていないことも多く、ビスが2本くらいしか効いていないことがザラにあるのです。
10kgのエアコンが、ビス2本だけで支えられている—



小さな地震でも落ちてきそう……
余談ですが、エアコンを取り付ける場所には、必ず下地を入れてもらいましょう。
「間柱や柱、スタッドに効かせるから大丈夫」
「ボードアンカーを使うから大丈夫」
このように言われても、納得しないでください。
間柱や柱、スタッドに効かせる方法では、5本すべてのビスを機能させることができません。
ボードアンカーを使う方法も、きちんと下地を入れて固定する方法と比べると、強度がかなり劣ります。
リフォームで工事を大掛かりにしたくないというのならわかりますが、新築なのにエアコンを入れる場所に下地を入れない理由はありません。
水漏れ時の被害
寝室のエアコンを頭の上に配置してはいけない理由、6つ目は水漏れ時の被害。
エアコンは、わりと頻繁に水漏れします。


その原因のほとんどが、ドレンホースの詰まり。
ドレンホースにゴミや虫、G(←めちゃくちゃ多いです!)が詰まったりして、室内機から水が漏れるのです。
どの場所でも室内にエアコンから水が漏れるのはイヤですが、頭の上だとそのイヤさは倍増。
寝ているときに上から水が降ってきたら、めちゃくちゃ不快です。
寝室のエアコンを頭の上に設置しないための解決策3つ
ここまでに、寝室のエアコンを頭の上に設置してはいけない理由を6つお話してきました。
では、どうすれば寝室のエアコンを頭の上に配置しないで済むでしょうか。
ここでは、その解決策を3つ紹介します。
- 隠ぺい配管
- 室内露出配管
- 窓を低くして窓上設置
どの方法も、リフォーム設計の現場で、私がよく提案する対策です。
隠ぺい配管
寝室のエアコンを頭の上に配置しない方法、1つ目は隠ぺい配管。


隠ぺい配管なら、外壁に面していない部分にもエアコンの室内機を設置できるので、選択肢が広がります。


ちなみに、天カセ(天井カセット型)も、隠ぺい配管の1つです。





ただし、コストは高め
室内露出配管
寝室のエアコンを頭の上に配置しない方法、2つ目は室内露出配管。
隠ぺい配管だと設置時や交換時のコストがアップするので、費用を抑えたいときにこの室内露出配管を採用します。






窓を低くして窓上設置
寝室のエアコンを頭の上に配置しない方法、3つ目は窓上設置。
窓~天井までの高さを大きく取り、そこにエアコンを設置するのです。


天井高2,400mmの寝室に、標準的な2,000mm高さで窓を設置すると、その上にカーテンレールとエアコンを設置するのは無理。
でも、高さ1,800なら、その上部にエアコンを取り付けることが可能です。



ただし、最近のエアコンはフラップ(羽)が大きいので、カーテンレールと羽がぶつからないかの検討が必要だよ
6寝室のエアコンを頭の上に設置するのは避けよう|まとめ
寝室のエアコンを頭の上に設置すると、デメリットしかないことと、その解決策をお話しました。
リフォームの現場でお会いする施主の声でも、寝室のエアコンを頭の上に設置してしまった後悔は、結構よく耳にします。
いろんな選択が最安でできる新築時にこそ、エアコンの位置をよく検討してください。
リフォームでエアコンの位置を変えたり、隠ぺい配管に変更するのは、新築時と比べて「べらぼうに」高くなりますよ。
エアコンの位置はこだわらない人が多いけれど、快適さに直結する内容。
細部にまでこだわって、最強の家づくりをしてくださいね。