図面から部屋の寸法を読み取る方法を一級建築士がわかりやすく解説します。
ハウスメーカーからもらった図面を見て、部屋の内側の寸法(内寸といいます)を読み取りたいと思いませんか?
ベッドや収納などの家具配置や、生活のしやすさを考える際、部屋の正確な寸法を知りたいと思うのは当然のこと。
でも、図面に描かれている寸法は壁芯を示すもので、部屋の内側の寸法を示す数字はどこにも記載されていないのです。

じゃあ、実際の部屋寸法は、家ができあがってからでないとわからないの?
そんなことはありません。
ちゃんと計算する方法がありますよ!
まずは、図面に描かれている家の部屋寸法が、どの部分を指しているのかを理解するところから始めましょう。
「すぐに内寸を計算する式を教えてよ」という人は、こちらからジャンプしてください。



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- 見落とすと即後悔につながる図面のチェックポイント
家づくりで後悔しないためには、施主も図面をしっかり確認することが絶対に必要。
設計者に任せきりにした結果、「こんなふうにできあがるなんて思わなかった」と後悔する施主がたくさんいます。


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そんな震えるほどの後悔をしてしまわないために、この記事がめちゃくちゃ役立ちます。


図面に表記されている寸法は、部屋の実寸法ではない
図面に表記されている部屋の寸法は、部屋の実寸法ではなく、「壁芯」を示すものだと先にお話しました。



確かに聞いたけれど、いまいちピンとこないんだよね
こう思う人がほとんどだと思うので、実際に図面を使いながら説明していきます。


上の図面は、6畳の部屋をツーバイフォー工法で作図し、寸法を入れたもの。



え?ツーバイフォー?我が家は在来工法なんだけど
大丈夫です。
ツーバイフォー工法も在来工法も考え方は同じ。
どちらの工法でも、ちゃんと部屋の寸法を図面から読み取れるよう説明していきます。
上の部屋図面をよーく見てください。
図面にある「3,640」とか「2,730」の寸法が、壁の中心間を指していることがわかりますね。
もう少しわかりやすくするために、赤い矢印の方向から見た図面を描くとこんな感じ。


建築の図面は、このように「壁芯」をベースにした寸法が描かれているのです。
図面から部屋の内側寸法を読み取るには壁厚を考慮する
図面に描いてある寸法は、部屋の内寸ではないことをお話ししました。
でも、施主が知りたいのは壁芯の寸法ではなく、内寸。




この寸法ですよね。
この寸法を知るためには、壁の厚さ(壁厚)を知る必要があります。
- 在来工法
- ツーバイフォー工法
この2工法の壁厚を見ていきましょう。
在来工法の壁厚
在来工法に使われる柱は、以下2種類が一般的です。
- 105角(3.5寸角)
- 120角(4寸角)
120角のほうが丈夫で強い家ができますが、費用がアップする上、部屋の内寸法が狭くなるのがデメリット。
この柱の内側に、12.5mmの石膏ボードが張られます。
図面にするとこんな感じ。
↓ ↓ ↓
- 在来工法105mm(3.5寸)角柱


- 在来工法120mm(4寸)角柱


これらの図面から、壁芯から部屋の壁面までの距離が以下だとわかりますね。
- 在来工法105角(3.5寸角)→65mm
- 在来工法120角(4寸角)→72.5mm
ツーバイフォー工法の壁厚
2×4に使われるスタッド(壁の構造材)は、以下2種類が一般的です。
- 204材(奥行89mm)
- 206材(奥行140mm)
そして、在来工法同様、内側に12.5mmの石膏ボードが張られます。
パッと見、140mmの奥行がある206材を使うと、部屋が狭くなりそうな気がしませんか?
でも、そうはなりません。
ほとんどの場合、206材は外壁面に使われ、壁芯は構造材の中心でなく内側にずらされるため、部屋の内側寸法は狭くならないのです。
言葉だと難しいので、図面にするとこんな感じです。
↓ ↓ ↓
- 2×4工法89mm(204材)


- 2×4工法140mm(206材)


204材でも206材でも、壁芯から部屋の壁面までの距離は同じになることがわかりますね。
2×4工法の場合、壁芯から部屋の壁面までの距離は以下です。
- ツーバイフォー工法204材(奥行89mm)→57mm
- ツーバイフォー工法206材(奥行140mm)→57mm
図面から部屋の内側寸法を読み取る計算式
図面に記載されている寸法から、部屋の内側寸法を計算する方法をここではお話しします。
いったん、在来工法とか、2×4工法とか、壁厚とかを忘れて以下の図面を見てください。


この図面から、部屋の内側寸法を知るための計算式は以下だとわかります。
部屋の内側寸法=図面に表記してある壁芯寸法-(2×「壁芯から部屋の壁面までの距離」)
ここで、先ほどの「壁芯から部屋の壁面までの距離」を思い出します。
ここから先は、
- 在来工法
- ツーバイフォー工法
それぞれの工法にわけて解説しますね。
在来工法の内側寸法を読み取る計算式
在来工法の壁厚は以下でした。
- 在来工法105角(3.5寸角)→65mm
- 在来工法120角(4寸角)→72.5mm
これを先の計算式に当てはめると、
- 在来工法105角(3.5寸角)
部屋の内側寸法=図面に表記してある壁芯寸法-(2×65)
=図面に表記してある壁芯寸法-130
- 在来工法120角(4寸角)
部屋の内側寸法=図面に表記してある壁芯寸法-(2×72.5)
=図面に表記してある壁芯寸法-145
たとえば、図面に3,640と寸法表記されている部屋なら、内側の寸法は以下になります。
- 在来工法105角(3.5寸角)




3,640-65×2=3,510mm
- 在来工法120角(4寸角)




3,640-72.5×2=3,495mm
ツーバイフォー工法の内側寸法を読み取る計算式
続いて、2×4工法。
ツーバイフォーの壁厚は、以下でした。
- ツーバイフォー工法204材(奥行89mm)→57mm
- ツーバイフォー工法206材(奥行140mm)→57mm
これを先の計算式に当てはめると、
- ツーバイフォー工法204材・206材共
部屋の内側寸法=図面に表記してある壁芯寸法-(2×57)
=図面に表記してある壁芯寸法-114
たとえば、図面に3,640と寸法表記されている部屋なら、内側の寸法は以下になります。
- ツーバイフォー工法204材




3,640-57×2=3,526mm
- ツーバイフォー工法206材




3,640-57×2=3,526mm
部屋の内側寸法が狭くなるケース
部屋の内側の寸法は、ここまでにお話してきた方法で計算することができます。
ただし、例外も。
計算した寸法よりも、部屋内の寸法が狭くなることがあるのです。
- 厚みのある壁材を選択した場合
- ふかし壁
厚みのある壁材を選択した場合は、部屋の内側寸法は狭くなる
部屋の内側寸法が狭くなるケース、1つ目は厚みのある壁材を採用した場合。
ここまでにお話してきた壁厚は、壁紙(ビニルクロス)を張る前提のものです。
木パネルやエコカラットなど、厚みがある壁材を採用する場合は、その分の厚さを壁厚にプラスする必要があります。


たとえば、2×4工法で厚さ5.5mmのエコカラットを張ると、下図のようになります。


ふかし壁があると、部屋の内側寸法が狭くなる
部屋の内側寸法が狭くなるケース、2つ目はふかし壁。


ふかし壁とは、柱や壁を残したまま引き戸を採用したいときなどに壁厚を大きくすること。
上の画像のように、ふかし壁の範囲を表記する設計者が多いはずです。
どれくらいふかしたかの寸法表記は、ある場合とない場合があります。
ですので、パッと図面を見て他の部分より太い壁がある場合は、自分で部屋の内側寸法を計算するのではなく、設計者に確認するのが安心です。
図面から部屋の内側寸法を読み取る|まとめ
図面から部屋の内側寸法を読み取る方法について、解説してきました。
まとめるとこんな感じです。
- 在来工法105角(3.5寸角)
部屋の内側寸法=図面に表記してある壁芯寸法-130
- 在来工法120角(4寸角)
部屋の内側寸法=図面に表記してある壁芯寸法-145
ツーバイフォー工法(204材・206材共)
部屋の内側寸法=図面に表記してある壁芯寸法-114
図面から寸法をしっかり読み取り、部屋の大きさを正確に把握してくださいね。