フローリングの向きで後悔をする施主が、わりとたくさんいます。
と言うと、
フローリングの向きなんて、部屋の長辺方向に張っておけば後悔なんてしないのでは?
このように思う人もいるでしょう。
しかも、家を新築するときは決めることがたくさん。
フローリングの向きにまで深く考えが行き届かず、
全部、長辺方向でOKです
こんなふうに惰性で答えてしまう施主がほとんどです。
でも、フローリングの向きを決める要素は、部屋の長辺や短辺だけではありません。
場合によっては、短辺方向に張ったほうがキレイな現場もたくさんあるのです。
私はリフォーム設計を本業とする一級建築士。
日常的に、築5~50年の家に住む施主にお会いする機会があります。
家を建てて何年も経ってから、
フローリングはこの向きじゃないほうがよかった
と後悔する施主を何人も見てきました。
この記事ではフローリングの向きに後悔する事例で、よくあるものを5つ紹介。
フローリングの向きで後悔しないためにも、ぜひ最後まで読んでくださいね。
さっそく、フローリングの向きで後悔した1つ目の事例をお話しようと思いますが……
その前に、家づくりで後悔したくない人は、以下の2記事を必ず確認しておいて。取り返しのつかない後悔をする確率が限りなく低くなるよ!
- 見落とすと即後悔につながる図面のチェックポイント
家づくりで後悔しないためには、施主も図面をしっかり確認することが絶対に必要。
設計者に任せきりにした結果、「こんなふうにできあがるなんて思わなかった」と後悔する施主がたくさんいます。
- 築古の家を700軒以上見て、リフォームしてきた一級建築士が教える「後悔しないための15+174項目」
家づくりの後悔には「取り返しのつかないレベル」のものがいくつかあります。
なかには、1千万円超えの負担を強いられるエグイ後悔も。
そんな震えるほどの後悔を20年後にしてしまわないために、この記事を必ず読んでおいてください。
フローリングの向きで後悔①床見切りが入る
フローリングの向きで後悔する事例、1つ目は床見切り。
床見切りってなに?
床見切りとは、溝のない段差3mm程度の敷居のこと。
上の画像は樹脂に木目のフィルムが張ってある床見切りですが、他にもいろいろあります。
- アルミの床見切り
- 木製の床見切り
これらの床見切りは、異なる床材の堺や、向きの違うフローリングの堺に入れます。
たとえば、こんなところに床見切りが入るよ
床見切りが入っても気にしない人はまったく気にしませんが、気にする人はすごく気にします。
樹脂製の床見切りが安っぽくてイヤだ
床見切りなしのフラットな床のほうが、掃除がしやすかったのに
見た目がスッキリしていない
こんな床見切りが入るなら、フローリングの向きをそろえればよかった
このような後悔を私は何度耳にしたかわかりません。
さらに、施工してすぐの床見切りはキレイですが、日常的に踏まれて擦られるので劣化が速め。
床見切りの材質を変えることで満足するならいいですが、どうしても床見切り自体がイヤだという人は、隣接する部屋のフローリングの向きをそろえないと後悔することになりますよ。
フローリングの向きで後悔②ウッドデッキの向きと違う
フローリングの向きで後悔する事例、2つ目はウッドデッキとの方向違い。
建物本体と外構は打ち合わせのタイミングがずれるので、建物のほうで変更ができなくなってから外構の内容が具体化するということが多々あります。
その一例がフローリングの向きとウッドデッキ。
ウッドデッキは、通常、建物に対して直交の向きで施工します。
メーカーの商品は、直交方向に施工する前提で製作されているよ
平行する向きでの施工もできますが、材料を多く必要としたり、施工性が落ちるため割高になるのです。
フローリングの向きを変更できないタイミングになってから、これらのことを知り、後悔する人も。
ウッドデッキを採用する予定の人は、相性を考えてフローリングの向きを決めましょう。
ちなみに、ウッドデッキとフローリングの向きが違うからといって、それが不正解ではありません。
あなたが優先するものがなにかによって、選ぶのがベストです。
後悔しやすいのは、
何も考えずにフローリングの向きを長手方向に決めたら、ウッドデッキの向きと直交してしまった
というようなケース。
難しいと思いますが、建築は「先読み」が大切です。
全体の完成形をイメージしながら、物事を決めていきましょう。
先読みするのにすごく役立つ教科書を作ったから、よかったら参考にしてみて
フローリングの向きで後悔③天井材と向きが違う
フローリングの向きで後悔する事例、3つ目は天井材と向きが違うこと。
これも、ウッドデッキと同じで、「絶対に天井材とフローリングの張る向きをそろえなければならない」という決まりはありません。
実際、そろっていない現場はいくつもあります。
でも、私はそろっているほうが好きだし、そのほうが美しいと思っているよ
だから、もし我が家を新築するとしたら、絶対にフローリングと天井材の向きはそろえます。
このあたりのところは、完全に各個人のこだわりで決めるべきところ。
そろっていなくても不正解ではないが、私はそろえたい。そろえないと後悔する。
と考えるのか、それとも、
床と天井のそれぞれで、一番キレイに見える方向で施工してほしい。
どちらも、正解です。
あなたはどちらですか?
フローリングの向きで後悔④キッチンセットの向きと違う
フローリングの向きで後悔する事例、4つ目はキッチンセットとの向き違い。
画像を見るのが分かりやすいと思うので、見比べてみてください。
- フローリングとキッチンセットの向きをそろえた事例
- フローリングとキッチンセットの向きが直交している事例
キッチンセットとカップボードの間の通路部分もフローリングが直交するため、ちょっと目地のうるさい感じが私は気になります。
これも、各個人の考え方に左右されるポイントではありますが、一度気になりだすと止まらなくなるのが「こだわり」です。
後悔する前に、よーーく考えて決めましょう。
もうお気づきだと思いますが、私はキッチンセットとフローリングの向きをできる限りそろえたい派。
とくに、横並びキッチンなどでダイニングテーブルとキッチンセットの向きが同じ場合は、なおさらフローリングも同じ向きにしたいです。
ただ、キッチンセットとフローリングの向きをそろえることで、天井材と方向が合わなくなるなら話は別。
天井材とフローリングの向きがそろうほうを、私だったら優先します。
これも、人によって優先順位が異なるはず。
あなたが何を優先するかで決めましょう。
フローリングの向きで後悔⑤アクセント壁との相性
フローリングの向きで後悔する事例、5つ目はアクセント壁との相性。
たとえば、上画像のタイル壁がアクセント壁として部屋の一面だけに張る計画だとしたら、フローリングの向きは画像の向きではなく90度回転した向きのほうがバランス的にはきれいです。
全面が同じタイル壁なら、フローリングの向きを気にする必要はないけどね
逆に、画像のタイルが縦ストライプのような縦長の形状なら、画像通りのフローリングの向きが合います。
フローリングの向きに後悔したけど張り替えは可能?
「フローリングの向きに後悔した場合は、張り替えればいい」という意見を見かけました。
でも、私はこの考え方には反対。
フローリングとその下にある合板は、クギだけでなくボンドでも接着されています。
張ったばかりのフローリングはまさにボンドベッタリな状態で、それを無理やりはがすと、その下にある合板を痛めてしまうのです。
さらに、ドア枠なども痛みます。
フローリングだけをキレイにはがして張り替えることは、不可能なのです。
それでも、どうしてもという場合は施工しますが、やっぱり新築してすぐのリフォームは「元の状態が一番キレイ」だと思いますし、リフォーム関係者はそう考える人が多いです。
そうは言っても、新築してすぐのリフォームも意外と多いけどね……
できるだけ後悔のないように、しっかり検討して家づくりをしましょう。
フローリングの向きだけではないですが、リフォームで新築時の後悔をリカバーしようとすると、元の状態よりキレイにならないだけでなく割高です。
フローリングの向きで後悔|まとめ
フローリングの向きで後悔する事例を5つ紹介しました。
どの事例も、万人が後悔するというものではなく、各個人のこだわりによるところが多いものです。
でも、「こだわり」程やっかいなものはありません。
一度気になったら、「もう絶対にこのフローリングの向きはおかしい!」と思い込むくらい気になってしまいます。
後悔しないためには、事前にしっかり考えておくことが大切。
あれこれ検討して決めた向きで張ったフローリングなら、きっと後悔しないはずです。
後悔のない向きでフローリングが張れますように。