設計事務所から提案されたオシャレな外観の間取り──
デザインはステキだけど、私たち家族が、生活しにくそうなところがいくつかある。

このまま決めてしまって、本当に大丈夫…?
そんなCさんの「好きなデザインを活かしながら不便を手放す間取りができるまでの話」を、実際に提案した図面とともにご紹介します。
デザインは素敵。でも「このままで暮らせる?」という違和感が消えなかった。
模型を見たとき、「わあ、すごい!」と感動したCさん。
設計事務所が提案してくれた間取りは、外観が美しく、一見完璧に思えました。
でも、図面をよく見ると、



寝室からトイレが遠すぎない?



ダイニングからトイレが丸見えかも…?



この通路、ちょっと長すぎる?
暮らしやすさへの不安がじわじわ湧いてきたといいます。
「ちゃんと納得してから家づくりを進めたい」
──その想いから、Cさんは間取り相談企画に応募を決めました。
「これ、けっこう独特だ…」──まずは外観と暮らしをつなぐチェックから
送られてきた図面を開いて、まず私が感じたのは「これはなかなか独特な形だな…」という印象。
Cさんが気に入っているという外形は、かなり印象的で目を引くデザインでした。
“暮らしにくさ”の原因がどこに隠れているのか──
図面をひとつひとつ丁寧に読み解きながら、チェックを始めました。
ベースプラン


32.60坪
Cさんのモヤモヤポイントは以下。
- 通路が長くてもったいなく感じる
- ダイニングからトイレが見えて、出るときに気になりそう
- 寝室からトイレが遠い
私のチェックバックは以下。
チェックバック


- 外壁ラインが凸凹で、建築コストとメンテナンス費用の両方が高くなる
- 重心と剛心のズレによる耐震性の不安
- 動線の長さや配置の違和感は「細長い建物形状」が原因
- ポケット引戸を多用しているが、指はさみ対策は考えているか
- 通り抜けできないシュークロの場合、玄関に靴箱を置かないと不便だが、狭くて置くスペースがない
- 玄関にベンチを置きたいという要望も、狭いのでかなえられない
- トイレは心配されている通り寝室から遠くて不便だと思う
- 寝室のベッド配置が足元からのアクセスで不便
- ダイニングから見えるトイレも生活すると気になると思う
- キッチンの冷蔵庫スペースがギチギチで使いにくいだけでなく、搬入も難しい
- ランドリーは通路だらけで干す場所がない
気になる箇所がかなりたくさんありました。
このチェック結果と、Cさんがご要望シートに書いてくださった内容をもとに、ラフプランを作っていきます——
「うちの暮らし、ちゃんとわかってくれている」──ラフプランに感じた安心感
「わ、これ…すごく住みやすそう」
Cさんがそう感じたのは、提案されたラフプランに家族の暮らし方がしっかり反映されていたからでした。
Cさんがご要望シートに書いてくださった間取りに対するご要望は以下。
- 子どもたちが遊ぶための周りから見えにくく飛び出しにくい庭がほしい
- 長めのいい北側に庭がほしい
- キッチンから庭で遊ぶ子どもを見守れるようにしたい
- 外部収納がほしい
- 玄関にベンチが置きたい
- シュークロがほしい
- 横並びキッチンにしたい
- 冷蔵庫はパントリーに置き、隠したい
- 室内干ししかしないのでランドリールームがほしい
- 洗面と脱衣室は別にしたい
- ファミクロがほしい
- 子ども部屋は廊下を挟みプライバシーを尊重
- 書斎がほしい
- テレビの代わりにプロジェクターを使用
- 32~34坪程度にしたい
これを元に作ったラフプランは2つ。
まずは窓なしで間取りのみを見ていただきますが、ここでお出しするプランはあくまで検討の「キッカケ」。
施主がどんなものを好み、どんなものを不要だと考えるのかを知るために、色々な要素を散りばめてあります。
だから、施主には遠慮なくプランに対する感想を言ってもらうことにしているのです。
ラフプランA


33.44坪(ベースプラン+0.84坪)
- 外形はベースプランに近い形状
- ダイニング側は奥行きを広くしてゆとりをもたせた
- LDKエリアと寝室エリアをしっかりゾーン分け
- 玄関ゆったりで通り抜けできるシュークロ
- ご要望のベンチも玄関に置ける
- 寝室は少し余裕をもった広さに
ラフプランAを見たCさんの感想は——



LDKなどの共有スペースと個室スペースがまん中あたりで分離しているのがよいと思った



シュークロが広いのもよい



寝室は最低限の広さでいい



リビングは正面から庭が見えるベースプランの位置がいい
ラフプランB


33.94坪(ベースプラン+1.34坪)
- 北庭のままで建物の配置を見直し、形状を整えた
- キッチンからもリビングからも庭が見える
- 玄関は家族導線と来客動線の2WAY
- 寝室は少し余裕を持った広さに
- 買い物帰り動線が長いので勝手口を採用
ラフプランBを見たCさんの感想は——



ツーウェイの玄関は必要ないかな



リビングは正面から庭が見えるベースプランの位置がいい
ここまでの内容をZOOMで打ち合わせた後は、検討期間に入ります——
検討期間に再認識——大きくは変えたくない
「まるたともっと合う間取りを見つけよう」では、ZOOMでのアドバイスやラフプランを受けて、施主が「じっくり考える時間」を3日~1週間ご用意しています。
後から湧いてくる気づきも、最終図面にしっかり反映させたいからです。
もちろん、検討期間中もラインでの質問は何度でもOK。



今の家の形と配置が好きなので、できればそのままで
ZOOMでのヒアリングと検討期間を通じて、Cさんご夫婦が大切にしたいのは、これまで設計事務所と作り上げてきた「外形」と「LDKの配置」。
その外形や配置を崩さずに、生活しやすさやいくつかの不満点を解消すること——
それが、最終的にC様が満足する間取りにつながるのだと、改めてわかりました。
検討期間中に改めてCさんが取捨選択した内容は以下です。
- リビングからもダイニングからも北側の景色が見える元の配置が気に入っている
- 寝室は足元からダイブするアクセスでも構わないので6畳にしたい
- 子ども部屋も4.5畳でじゅうぶん
そして、ここまでに育ててきた答えをすべて詰め込み、最終プランを作ります——
「この形と配置が好き」──そのこだわりを活かしながら、不満だけを解消する最終図面
- 通路が長くてスペースがもったいない
- トイレがダイニングから見える位置にある
いくつかの不満の原因は、外形の細長さにありました。
でも、Cさんご夫婦はこの外形を気に入っている…
だから、今の外形の雰囲気を残し、屋根形状が大きく変わってしまわないように気をつけながら、暮らしやすさを損なっていた部分だけを調整。
そして、通路の長さも、トイレの位置も、玄関の広さも、ランドリーの使いやすさも、不満点を全部解消したプランがこちら。
最終図面


34.06坪(ベースプラン+1.46坪)
このプランを見たCさんの感想は——
「すごく生活しやすそうな間取りで感激です」──自分では気づけなかった答えが、ここにあった
最終図面後のアンケートとラインに記載いただいたCさんの声を、そのまま掲載します。
すごく生活しやすそうな間取りで感激です。
要望を細かく聞いていただき、希望に沿った間取りを提案していただきました。
間取り相談をお願いする前に、自分でもいろいろ考えてみましたが、どこをどう変更したら不満点を改善できるのかが思いつかなかったので、ありがたかったです。
この度はありがとうございました。



住んでみてから気づく「使いにくさ」をなくしたプランを作りました。自画自賛ですが、すごく生活しやすい間取りができたと思います。
「だいたい満足」と不満点に目をつぶっていませんか?
「だいたい満足。でも気になるところがある」──
その違和感の中に、生活のしにくさが隠れていることも。
気になる部分を1つ1つ丁寧に見直すことで、「ここに住みたい!」と思える間取りに出会えます。
納得できる暮らしは、あと一歩の見直しからです。