玄関の框を斜めにするデメリットのなかで、とくによく耳にするものを6つ紹介します。
私はリフォーム設計のプロ。
築5~50年の家を頻繁に見る機会があります。
そのなかには、玄関の框が斜めになっている家も。
施主の感想は、満足している人と後悔している人が半々です。
この記事では、斜めの玄関框に後悔している施主が口にするデメリットの中で、とくに多いものを6つに厳選して解説していきます。
玄関の框を斜めにしようと考えている人は、必見の記事です。
さっそく、1つ目のデメリットを解説する前に……

家づくりで後悔したくない人に絶対読んでおいてほしい記事を2つ紹介するよ!
- 見落とすと即後悔につながる図面のチェックポイント
家づくりで後悔しないためには、施主も図面をしっかり確認することが絶対に必要。
設計者に任せきりにした結果、「こんなふうにできあがるなんて思わなかった」と後悔する施主がたくさんいます。


- 築古の家を700軒以上見て、リフォームしてきた一級建築士が教える「新築後のエグい後悔」。
家づくりの後悔には「取り返しのつかないレベル」のものがいくつかあります。
なかには、1千万円超えの負担を強いられる後悔も。
そんな震えるほどの後悔をしてしまわないために、この記事がめちゃくちゃ役立ちます。


玄関の框を斜めにするデメリット①使いにくい
玄関の框を斜めにするデメリット、1つ目は使いにくいこと。
斜め框の玄関は、まっすぐな框の玄関と比べて使いにくいのです。
最初からとんでもないデメリットでびっくりした人もいるかもしれませんが、図面を使いながらわかりやすく解説していきますね。


上の図面で帰宅時の動線を考えてみましょう。
上図のように玄関の框が斜めの場合、人はその框に対して平行に立って靴を脱ぎ、玄関ホールに上がります。


玄関ホールに上がった後、リビングに向かう動線はこんな感じ。


この場合は、向かう方向と体の向きがあっているので、問題なく動けます。
では、キッチンに向かう動線はどうでしょうか。


パッと見正面にあるドアなのに、実はまっすぐな動線になりません。



ちょっと体をひねるくらいの話でしょ?
こう思うかもしれませんが、そのちょっとしたひねりは、框がまっすぐならする必要のない動きです。
これを毎日毎日繰り返すことで、



まっすぐの框のほうが使いやすかった
このように、ストレスがたまっていってしまう人もいます。
続いて、手洗いをする動線を見てみましょう。


これはもうUターンに近いくらいの動線になります。



でも、まっすぐの框でも、90度向きを変えるよね?



斜めの框だけが体の向きを変えるわけではないのでは
こう思う人もいますよね。





でも、違うんだよ。
「玄関と玄関ホールがまっすぐの位置関係なのに、框が斜めだ」ということに問題があるのです。
90度の位置関係である洗面台への動線なのに、Uターンに近いような動きをしなければならないことに、多少の使いにくさを感じてしまうのです。
1~2回なら、なんとも思わないでしょう。
でも、毎日毎回玄関を使うたびに感じる、そのちょっとした使いにくさが、次第にストレスにつながります。
さらに、この使いにくさのデメリットは、帰宅時だけではありません。
外出時にも、同じようなちょっとした使いにくさを感じます。


まっすぐ玄関に下りたいのに、体は斜め方向を向いていますね。
玄関ホールの正面にある玄関ドアなのに、框が斜めなせいで直進できないのです。
とはいえ、まったく使いにくさを感じない人もいるので、個人差の大きいデメリットではあります。
玄関の框を斜めにするデメリット②違和感
玄関の框を斜めにするデメリット、2つ目は違和感。
先ほどの使いにくさの話で、
「玄関と玄関ホールがまっすぐの位置関係なのに、框が斜めであることが使いにくさにつながっている」
とお話しました。
これの原因が、ここでお話する「違和感」です。
この違和感が使いにくさにつながり、やがて見た目としても「まっすぐのほうが自然だったのに」という後悔に発展してしまいます。
文字よりも画像を見たほうが伝わると思うので、比較してみましょう。
- 玄関の框が斜め


- 玄関の框がまっすぐ


見慣れているせいもあると思いますが、やっぱり框がまっすぐの玄関のほうが、斜めのものよりも見ていて落ち着く気がしませんか?
さらに、玄関マットを置いたパースを描いてみました。


なんだか、すごく違和感がありませんか?
「画像を見ても、まったく斜めの框に違和感なんて覚えない」という人は、玄関の框を斜めにしてもデメリットに感じないかもしれません。
でもそうでない人は、玄関の框を斜めにするという選択をもう一度考え直してみることをおすすめします。
玄関の框を斜めにするデメリット③それほど狭さを解消しない
玄関の框を斜めにするデメリット、3つ目は狭さの解消を目的としても、それほど効果がないこと。
玄関の框を斜めにする理由で一番多いのは、玄関や玄関ホールの間口が狭いので、少しでも框を長くするために斜めにするというもの。
でもですね、間口の狭い玄関は、いくら框を斜めにしたところで、言うほど広く見えません。
パースを描いてみたので、比べてみてください。
- 玄関の框がまっすぐ


- 玄関の框が斜め


どうですか?
玄関や玄関ホールが広く見えますか?
框を斜めにした玄関は、框に平行に人が立ったときに目線が壁を向くので、余計に狭く感じる可能性が大。
もちろん、框に平行に立ったときに開けている方向に目線が行くなら、多少は広く感じるでしょう。
でも、狭い玄関はいくら框を斜めにしても、それほど広く感じません。
そして、「より広くしよう!」として框の角度を鋭角にすればするほど、使いにくさや違和感が高まっていきます。
メリットに対して、デメリットが大きすぎるのです。
玄関の框を斜めにするデメリット④飽きる
玄関の框を斜めにするデメリット、4つ目は飽きること。


玄関の框はまっすぐなものがスタンダードです。
斜めの框は、よくも悪くも「特徴的なデザイン」。
ちょっと変わったものは、スタンダードなものと比べて飽きが早いのがデメリットです。
とくに、鋭角な玄関の框は、よりデザイン性が高くなるので、さらに飽きやすくなります。
玄関の框を斜めにするデメリット④掃除がしにくい
玄関の框を斜めにするデメリット、4つ目は掃除がしにくいこと。
框が斜めになるということは、玄関の形状も斜めになるので、鋭角になった部分にゴミやホコリがたまりやすくなります。


そして、鋭角な分、掃除もしにくくなってしまうのです。
鋭角部分の上部に玄関収納がある場合は、なおさらゴミがたまりやすいし、掃除がしにくくなります。
玄関の框を斜めにするデメリット⑥目地がそろわない
玄関の框を斜めにするデメリット、6つ目はタイルの目地がそろわないこと。


上の画像を見ると、玄関の床に張ってあるタイルの目地と、框の下部分の目地とが揃っていないことがわかりますね。
それほど目立つ部分ではないので、気にならないといえば気になりませんが、気にする人はめちゃくちゃ気にします。
あなたはどちらですか?
玄関の框を斜めにしてもデメリットを感じにくい間取り
ここまでに、玄関の框を斜めにするデメリットを6つお話してきました。
それによって、以下のように思った人もいるでしょう。



やっぱり、玄関框は斜めにしないほうがいいのかな
でも、そうとばかりは言えません。



玄関の框を斜めにしたほうがいい間取りもあるよ!
ポイントは以下。
- 框を鋭角にしない
- よく行く方向に向かって斜めにする
図にすると、こんな感じ。


この間取りの場合は、框を斜めにしたほうが玄関も玄関ホールも広く見えるし、使いにくいというデメリットもそれほど感じないはずです。
玄関の框を斜めにするデメリット|まとめ
玄関の框を斜めにするデメリットをお話しましたが、あなたの家の間取りはどうでしたか?
デメリットが目立ちそうな間取りでしたか?
もしそうなら、斜めの框をやめるか、斜めの框を生かした間取りをもう一度検討してみてください。
どんな玄関の間取りでも、一律に斜めの框がダメということではありません。
玄関の間取りによっては、斜めの框のほうが使い勝手や見た目がよくなることも。
あなたの家の玄関がデメリットを感じず、使いやすいものになることを祈っています。